通勤ラッシュの後悔
明治大学
先週末の通勤ラッシュでの出来事になるんですが、どうしても煮え切らない思いがあるので今更ながら投稿させていただきます。
先週末、1限の授業に出席するため、都内に向かう通勤ラッシュの某私鉄に乗っていました。
途中駅で接続した急行電車に乗り換え、ドア付近でいつも通り人混みに揉まれていると、直通の地下鉄路線も乗り入れる途中のターミナル駅で乗り込んできた50前後と見られるサラリーマン風の男性と20半ばと見られるOL風の女性が、私の右斜め前で、お互い前後の位置関係(女性が前で男性がその背後)になり、そのまましばらくは何事もなく乗車していました(当然、車内は身動き1つ取れないレベルの混雑具合)。
5分ほど経ち、電車が終着駅までノンストップで走る都区内区間に差し掛かった頃、その女性がモゾモゾと不可解な動きと頻繁に後ろを振り向く動作を見せ始め、具合でも悪いのかと暫し注視していると、突如、背後のサラリーマンの方へ無理矢理身体をよじるかたちで向き直り、「さっきから、ちょっと、やめてもらって良いですか?」と言い放ったのです。
内心、面倒事には関わりたくないですし、周囲も、触らぬ神に祟りなし という感じで無反応を決め込んでいたので、私もそのまま視線を窓の外に移して終着駅までやり過ごそうとしていました。
ところが、です。その女性に詰められていたサラリーマンが、「ちょっと、なんのことですか?なんのことですか?」 と焦った様子で周囲に助けを求めるように忙しなく目線を配り始め、彼らの斜め後ろにいた私にも懇願の眼差しを向けてきました。
その反応からするに、直感的に、(あっ、これは完全に冤罪だな) と確信しました。
よく見ると、その男性は、品の良い腕時計をし、アイロンのかかったシワ1つないスーツをきっちりと着こなし、整えられた白髪混じりの頭髪は日頃の苦労を物語っているようで、指に律儀に嵌められた結婚指輪も確認できたことから、家族のために身を粉にして働く誠実な人間であることが伺い知れました。それに、男性に詰め寄っている女性は、しきりに「やめてください」と言うばかりで、何ら痴漢の証拠や具体的な状況について言及していません。
私は、なんとかこの男性に助け舟を出したいと思いましたが、私自身、その男性の手元まで角度的に見えていませんでしたし、反論する客観的で具体的な根拠は持ち合わせていませんでした。
それに、もしもこの女性が示談金目的で痴漢自体をでっち上げていた場合には、その男性を庇った私まで共犯に仕立て上げられるのではないかとも考えてしまい、結局、終着駅に着くまで何もできないまま、電車のドアが開くと同時にその男性は女性に手を引かれてホームに引きずり出されていました。
その後の事の顛末は分かりませんが、恐らく男性はそのまま駅事務室に連行されたのではないかと推測されます。駅事務室に一度行ってしまうと、ほぼ自動的に警察に引き渡されると聞きます。そうなると、やってもない罪を認めて示談に応じるか、抗って司法手続きに臨むか のどちらかです。そうなると、その男性の社会的地位や家族、自尊心は踏みにじられることになりかねません。
私含め、その車両に居合わせた乗客の多くは、その男性の無罪を薄々感じながらも、保身のために最後まで見て見ぬふりをして助け舟を出すことができなかったことは事実です。その女性が示談金目的の冤罪ビジネスでその男性をハメたのか、または本当に勘違いしてしまったのかは今となっては知る術もありません。
バイスタンダー効果と言ってしまえば響きは良いですが、結局は自己保身ゆえに、正義を貫きその男性を助けられなかった自分の信念の弱さは否めないところです。後悔先に立たず。そんな時に、冷静に助け舟を出せるような正義と余裕のある人間になりたいです。