公共のルール

駅前のベンチで時間を潰していたら、肌の荒れて髪もオイリーな弱々しいお爺さんが隣のベンチに座った。土曜日の午前10時。日差しが照りつけてくる時間帯だった。私は特に気に留めないどころかその人が来たことにすら気づいていなかったのだけれど、周囲が急に騒がしくなってきたので音の発生源を確認したのだ。見てみると、そのお爺さんが鳩に囲まれていた。集まるわ集まるわ、15羽くらい居たんじゃなかろうか。彼の手元をよく見るとプリッツの外装が見えた。彼は震える指先でプリッツをちぎっていた。  私はドン引きした。それと同時に、この清潔なコンクリ街の中で鳩が生き残れている理由に納得した。  私は側にあった「ハトの餌やり禁止!」の看板を確認して、それからまたお爺さんに視線を戻した。直接注意するべきか、でもルールの恩恵を受けていない人もいる中でそのルールの成立過程に詳しくない私が「ルールだから」という理由で納得させるのは難しいのではないか、そもそも小娘が言ったところで...おばちゃんに任せた方が良いのではなどと思案しているうちにお爺さんはそそくさと去っていった。両手をズボンのポケットに突っ込んだ、どこか不自然な歩き姿を見て『ペットを飼う余裕はないのかな』とぼんやり思った。  考えすぎて行動のタイミングを失った日だった。
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